AIを活用したイラストの3DCG化研究

AI活用・生成技術

イラスト素材から3DCGモデルを生成する手法を、
AI生成ツール「Meshy」を用いて検証しました。
平面のイラストを立体化することで、
オリジナルキャラクターを使ったアニメーション動画の作成など、
新たなコンテンツ活用の可能性が広がります。

 イラストを立体的に表現する試みは、グラフィックデザインや映像制作の分野において、長年にわたり重要なテーマの一つとなってきました。
 しかし、平面のイラストから本格的な3DCGモデルを作成するには、高度なモデリング技術と多くの時間が必要です。特に、正面図しかないキャラクターやオブジェクトを立体化するには、背面や側面の形状を想像して作り出す必要があり、経験や感覚に頼る部分が大きくなります。

 近年はこうした課題に対し、AIが自動的に立体構造を補完し、短時間で3Dモデルを生成できる新しいツールが登場しています。ここでは、平面イラストから効率的に3DCG化を行う可能性を探る実践的な研究として、その制作過程と結果を検証していきます。

検証内容

 今回は、当社デザイナーが制作したキャラクターイラストを対象に3DCG化を行っていきます。

 平面イラストから3Dモデルを生成するには、背面や側面といった情報をAIが補完する必要があります。そのため、こうした用途に適したアプリとして、Meshyhttps://www.meshy.ai/)を採用しました。
 Meshyは、AIを活用してイラストから3Dモデルやテクスチャを自動生成できるツールで、キャラクターやオブジェクトの立体化を含む多様な機能を備えています。

Meshyの基本機能

 Meshyは、画像・テキスト・3Dデータを相互に変換できる多機能な生成プラットフォームで、次の6つの主な機能を備えています。

・画像生成モデル:画像から3Dモデルを生成する
・テキスト生成モデル:テキストプロンプトから3Dモデルを生成する
・AIテクスチャリング:画像やテキストからテクスチャを生成する
・テキストから画像へ:テキストプロンプトから静止画を生成する
・3Dから画像へ(Beta):3Dシーンから静止画を生成する
・画像から動画へ(Beta):単一画像から動画を生成する

 本研究では、平面イラストから3DCGモデルを作成するため、画像生成モデル(Image to 3D) を使用しました。

モデリング設定

 生成パネルにイラストを読み込み、各種設定を行いました。

AIモデル

モデリングに使用するAIモデルは以下の3種類から選択可能です。
・Meshy 4:従来モデル。安定性が高い。
・Meshy 5:マルチビュー機能対応。複数視点画像から高精度な立体生成が可能。
Meshy 6 Preview:2025年9月末に公開された最新モデル。最も高いモデリング精度を有する。

今回は Meshy 6 Preview を選択しました。
 単一アングルからの生成精度が特に高く、顔や手足などのディテールも自然に再現されます。
 前期モデルのMeshy 5では、後述する「マルチビュー機能」を使用出来ます。

マルチビュー機能

 複数アングルの画像データを読み込み、AIがそれらを統合して立体構造を補完する機能です。
 また、1枚の画像しかない場合でもAIが自動的に別アングル画像を生成できます。

 ただし、生成ビューによっては部分的な崩れが発生することもありました。
 素材が1枚のみの場合は、Meshy 6 Previewの方が安定して高品質なモデルを得られます。

A/Tポーズ

 AポーズまたはTポーズの姿勢でモデルを生成する設定です。
 アニメーション制作を想定する場合、リギング(骨組み設定)が容易になるため有効です。
 ただし、この設定を有効にすると元のポーズ情報は反映されず、印象がやや変化する場合があります。

ライセンス

生成物の利用範囲を指定します。
・CC BY 4.0:「CC BY 4.0」ライセンス対象
・プライベート:モデルを非公開で保持し、無断利用を防止。商用・独占利用に適します。

当検証の公開範囲は商用利用にあたるため、プライベートを選択しました。
※ フリープランでは「プライベート」を選択することはできません。

対称モード

AIが左右対称性をどの程度考慮するかを指定します。
・オン:完全に左右対称なモデルを生成。人物・車などに最適。
・オフ:非対称な形状を許容。地形や自然物などに適用。
・自動:AIが入力画像を解析し、対象に応じて自動判定。迷った場合に推奨されます。

元画像が左右非対称のポーズを取っている場合は、「オフ」または「自動」が良いと思います。

モデル生成と結果

完了後はブラウザ上でリアルタイムプレビューが可能で、自由に視点を回転させて確認できます。
結果として、崩れやすい顔の造形も自然で、全体的な形状精度は非常に高いと感じました。

 元のイラストに存在しない背面や側面もAIが自動的に補完しており、全体として滑らかで一貫した立体構造を持っています。
 ここ数年、「画像から3Dモデルを生成する」技術は各所で開発が進んでいますが、Meshyの生成品質はその中でも高いと思われます。

生成のばらつきと再試行機能

 AI生成の特性上、同一の画像・設定でも出力結果には多少の差異が生じます。

 ただしMeshyには「無料再試行」機能があり、1回の生成につき最大4回まで、クレジットを消費せずに再生成を行えます。
 この機能を利用することで、わずかな造形差を確認しながら、最も自然な形状のモデルを選択できます。

テクスチャ生成と編集

 先ほど作成したモデルに対し、MeshyのAIテクスチャ生成機能を使用してテクスチャを自動生成します。     
 モデルを選択し、テクスチャ生成画面へ進みます。Meshyのテクスチャ生成には、プロンプトを参照する「テキスト入力」 と、画像を参照する「画像入力」 の2種類の方法があります。

 今回はイラストから作成したモデルであるため、元のイラスト画像を再度参照素材として使用しました。

 生成結果は、全体の色合いやトーンは概ね良好で、AIが自動的にキャラクターの配色や模様を再現してくれました。

 一方で、目元などの繊細な部分については原画と異なる仕上がりとなり、
 とくにリアルな質感が強調されてしまうなど、意図しない表現が発生しました。

 Meshyには「テクスチャ編集機能」が用意されており、特定の範囲を指定してプロンプトを入力することでAIによる部分修正を行うことが可能です。
 しかし、実際の使用感としては、部分的な修正は難しく、想定している修正を加えることが難しいケースが多かったです

 そのため、テクスチャの細部修正や微調整は、別の3DCGソフトで行うのが現実的と考えられます。
 今回は、Blenderを使用して手動で調整を行いました。

 Blenderに転送した後、「テクスチャペイント」などで微調整を加えました。

完成モデル

AI生成モデルと手作業モデルの比較

 同一のキャラクターイラストをもとに、MeshyでAI生成したモデル(微調整込み)と、Blenderで手作業によりモデリングしたモデルを並べて比較しました。
 MeshyによるAI生成モデルは、全体的なバランスが高く、顔や手足といった細部の造形も精密に再現されています。
 とくに、プロポーションやシルエットのまとまりが自然で、初期生成の段階から完成度が高い点が印象的でした。AIが学習データをもとに形状の一貫性を自動的に補完しているため、短時間で整った立体形状を得ることが出来ています。
 Blenderなどの3DCGソフトを扱える方であれば、「ベースモデル」をMeshyで生成し、その後モデルを他ソフトへ転送し、微調整を行うという工程を取ることで、作業効率と品質の両立が期待できます。

 AI生成によるモデルを基盤としつつ、Blender上で形状やテクスチャを整えることで、短時間で実用的なクオリティへ到達することができます。
 特にキャラクターやプロップ制作など、造形の正確さとスピードが求められる場面では、このハイブリッドな制作手法が非常に有効だと感じます。

「画像から動画へ」機能

 Meshyには、静止画をもとにAIが自動で動画を生成する「画像から動画へ(Image to Video)」機能が搭載されています。
 1枚の画像を入力として、キャラクターやオブジェクトを動かす短いアニメーションを生成できる機能です。

 今回は、Blenderでレンダリングした3DCGキャラクターを素材として使用しました。また、プロンプトを入力することで、AIにどのような動きをさせるかを指定します。
 モデルの種類や動画の長さ、出力品質(Standard/Pro/Master)も選択できるため、用途に応じた生成が可能です。

 生成が完了すると、キャラクターが自然に動く短い動画が出力されました。
静止画から動きを補完するAIの処理は非常にスムーズで、モーションが自然に再現されている点が印象的でした。

まとめ

 本研究では、AIを活用した3DCGモデル生成ツール「Meshy」を中心に、平面イラストから立体モデルを効率的に生成する手法を検証しました。
 AI生成モデルは、短時間で全体バランスの整った造形を出力でき、キャラクター制作の初期工程を大幅に短縮できることが分かりました。特に、Meshy 6 Previewモデルでは、従来よりも高精度で自然な形状を再現でき、背面や細部の補完精度も高く、実務において十分に活用できる水準に達しています。
 一方で、目元や質感などの微細な表現には依然として調整が必要であり、Blenderなどの3DCGソフトを用いた仕上げ作業が有効でした。

 今後、AIによる3D生成技術はさらに進化し、イラストやデザイン制作の領域においても、より高精度な自動化とクリエイティブ表現の両立が進むと考えられます。当社でも、AIツールを活用したデザインワークフローの研究と実装を継続し、制作の効率化と表現の多様化を追求していきます。

 明昌堂では、イラストや3DCGの制作も承っております。イラスト作品集はこちらよりご覧いただけます。

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