制作現場で日常的に行われている画像補正作業を、
DTP技師とAI技術で同一条件のもと比較検証しました。
人物レタッチや電線削除を通して、
AIが得意とする工程と人の判断が必要な場面を整理します。
はじめに
AI技術の進化により、「制作の仕事はどこまで自動化できるのか」という問いが、現場レベルでも現実的になってきました。
そこで今回、当社ではDTP技師による制作とAI技術を用いた制作を、同じ課題・同じ条件で比較する検証を行いました。実際に手を動かしてみることで見えてきたのは、AIが得意とする部分と、人の判断や経験が不可欠な部分の違いです。
本記事では、検証結果をもとに、制作現場におけるAI活用の可能性と、今後求められる役割について整理しています。
検証内容と進め方
本検証では、制作現場で実際に発生する工程を想定し、DTP技師・デザイナー・動画技師による制作と、AI技術を活用した制作を同一条件で比較しました。
検証は以下の3つのラウンドに分けて実施しています。
第1ラウンド:画像補正
第1ラウンドでは、実際の制作現場で使用される画像補正の指示(赤字が入った原稿)をもとに検証を行いました。
画像技師による補正と、AI技術による補正をそれぞれ実施し、同じ指示内容をどのように再現できるかを比較しています。DTP技師は、指示の意図や仕上がりを想定しながら、色味や階調、細部の調整を行いました。一方、AI技術では、赤字指示をもとに補正処理を行い、可能な限り人の判断を介さずに仕上げることを試みています。
第2ラウンド:デザイン対決
第2ラウンドでは、同じ架空書籍のテーマを設定し、当社デザイナーとAI技術それぞれでデザイン制作を行いました。
書籍の内容や想定読者といった前提条件は共通とし、そこから導き出されるビジュアル表現を比較しています。当社デザイナーは、テーマの解釈や情報の整理、視認性や印象といった点を考慮しながらデザインを構築しました。AI技術についても、同じ条件を与えたうえでデザイン生成を行い、その表現力や再現性を検証しています。
第3ラウンド:動画作成対決
第3ラウンドでは、同一のシナリオをもとに、当社動画技師とAI技術による動画作成を行いました。
動画の尺や構成、伝えたい内容は共通とし、それぞれの手法でどのような映像が完成するかを比較しています。動画技師は、構成や演出、動きの緩急などを調整しながら制作を進めました。AI技術では、シナリオをもとに動画生成を行い、どこまで人の手を介さずに完成させられるかを確認しています。
検証におけるAI技術の扱いについて
本検証におけるAI技術の使用にあたっては、極力人間による手動工程を挟まないことを前提としました。やむを得ない場合にのみ最低限の手動操作を行い、AI技術単体での再現性や実用性を確認しています。
第1ラウンド:画像補正対決
第1ラウンドでは、実際の制作現場で使用される赤字指示が入った原稿をもとに、画像補正の検証を行いました。課題は以下の2点です。
・人物写真のレタッチ(赤字指示通りの修正)

・街の写真から電線のみを削除する

DTP技師による補正と、AI技術を用いた補正を同一条件で行い、仕上がりを比較しました。
人物レタッチの結果
・画像補正技師の補正した画像

・AIの補正した画像

人物レタッチでは、目元のクマの軽減、肌の質感調整、髪の乱れやテカリの抑制など、赤字指示に沿った修正を行いました。
DTP技師による補正は、全体のバランスが良く、違和感のない自然な仕上がりとなっています。修正痕が目立つこともなく、元の写真の印象を保ったまま整えられており、完成度の高い結果となりました。
AI技術による人物レタッチについても、大きな違和感はなく、指示内容を適切に反映した仕上がりとなりました。クマの削除や髪の乱れの調整なども、指示通りの結果を得ることができ、実用レベルであることが確認できます。ただし、テカリの軽減などは一部うまく補正出来なかった箇所もありました。
電線削除の結果
次に、街の写真から電線のみを削除する検証を行いました。
・画像補正技師の補正した画像

・AIが補正した画像

DTP技師による補正では、背景となる建物や空との境界も自然に処理されており、電線があったことを感じさせない仕上がりとなっています。細部まで違和感なく補正されており、完成後の品質としても安心感のある結果でした。
一方、AI技術による電線削除では、電線自体は削除できているものの、もともと電線と建物などが重なっていた箇所で、ぼやけや形の崩れが見られる結果となりました。背景が空など単調な部分では比較的自然に補完できましたが、建物など情報量の多い箇所では、仕上がりに差が出ることが分かります。
実際に行ったAI補正の工程
今回の画像補正では、PhotoshopのAI機能を使用しました。使用した主な機能は「削除ツール」と「生成塗りつぶしツール」です。
PhotoshopのAI機能については、別記事でも詳しく紹介しています。
https://www.meisho-do.co.jp/owned/index.php/2025/09/17/photoshop-ai/
人物レタッチでは、ペンツールなどで修正箇所を指定し、生成塗りつぶし機能を使って「クマを削除」「髪の乱れを抑える」といった指示を入力して補正を行いました。
・クマの削除指示


髪と肌が重なっている部分や、テカリが発生している箇所についても、指示通りの結果を得ることができています。


電線削除では主に削除ツールを使用しましたが、すべての電線を手動で指定する必要があるため、作業量は少なくありません。

マウス操作よりも、ペンタブレットなどを使用したほうが、作業時間の短縮につながると感じられました。
また、削除ツールを使用した箇所はやや解像度が下がってしまう為、歪みの原因にもなることが分かりました。


所要時間の比較
今回の画像補正における所要時間は、以下の通りでした。
・画像補正技師:1時間
・AI技術: 45分
AI技術による補正では、多くの工程を機械的に処理できるため、作業時間の短縮につながりました。一方で、仕上がりの細部については、補正内容によって差が生じる結果となっています。
第1ラウンドのまとめ
画像補正の検証では、人物レタッチのような比較的限定された修正であれば、AI技術でも十分に実用的であることが分かりました。
作業時間の短縮という点でも、AI技術は大きなメリットを持っています。一方で、街の写真における広範囲かつ細かな電線削除のような作業では、AIだけでは背景の補完が不十分となり、違和感が残るケースがあることも確認できました。
画像補正の分野では、スピードを重視する工程にはAI技術を活用し、仕上がりの完成度が求められる工程では人の手で調整するなど、内容や範囲に応じてAI技術と人の手を使い分けることが重要であると言えそうです。
第2ラウンド「デザイン対決」、第3ラウンド「動画作成対決」の結果はまた後日、回を改めて報告いたします。ご期待ください。

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