Photoshop生成AI機能の検証

AI活用・生成技術

⽣成AIにより、Photoshopの画像加工機能がさらに強化されました。
背景補完や画像結合等、見た目にはごく自然に処理されますが…
これらが商用利用に耐えられる品質なのかどうか検証しました。

 近年、⽣成AI技術の急速な発展に伴い、クリエイティブ制作の現場でも⼈⼯知能を活⽤した新しいワークフローが広がりを⾒せています。
 特にAdobe Photoshopは、画像編集ソフトとしての伝統的な機能に加え、⽣成塗りつぶしや⽣成拡張など、AIによる⾃動⽣成機能を積極的に取り⼊れることで、デザインやレタッチの⼿法に革新をもたらしています。
 ここでは、それらの機能を紹介しながら、個人ユースにとどまらず、実務や業務の現場でも十分に活用できるレベルかどうかを検証していきます。

使用バージョン: Adobe Photoshop 2025(26.10.0)

削除ツール

 AIを活用した削除機能です。この機能を利用することで、ユーザーが指定した選択範囲を直感的に削除し、その部分を周囲の画像内容に合わせて自然に補完できます。背景やテクスチャとのなじみが良く、複雑なパターンや細部においても違和感の少ない結果が得られる点が特徴です。

 AIの補完により、やや複雑な背景でも違和感のない形で仕上がります。
 従来は手動で複数のレイヤーを組み合わせたり、スタンプツールで細かく調整する必要がありましたが、この機能を使えば一度の操作で自然な仕上がりが得られます。
 特に雑多な背景や細かい模様がある場面でも、短時間で高品質な成果物を得られるのが大きな利点です。

生成塗りつぶし

 Adobe Firefly による生成AIを活用した編集機能です。選択範囲を指定し、テキストプロンプトを入力すると、その部分に新しいコンテンツを自動生成したり、周囲に自然に溶け込む形で背景や要素を補完したりできます。

変化を与える範囲を選択し

選択範囲に追加したいものを指定します。

陰影や背景情報なども自動的に最適化され、違和感なく描画されます。

また、複数のパターンの中から仕上がりを選ぶことが可能です。

 従来の塗りつぶし機能と異なり、生成される結果は複数のバリエーションとして提示され、用途に応じて最適な仕上がりを選択できる点が特徴です。また生成結果は新規レイヤーとして非破壊的に出力されるため、後からの修正や比較も容易で、作業の自由度と効率性を大きく向上させています。

参照画像機能

 Photoshop betaに搭載された生成AI機能には、参照画像を活用するオプションがあります。これは、ユーザーが手元の画像ファイルを参照として指定し、その特徴やスタイルを基にして生成塗りつぶしの結果をコントロールできる機能です。

 処理が完了すると、選択範囲が置き換わります。
 参照した画像の特徴が反映されるため、単純な生成に比べて意図に沿った仕上がりを得やすく、デザインの方向性をコントロールしやすいのが魅力です。

生成塗りつぶし機能の活用

生成塗りつぶし機能は、様々な用途に使用出来ます。

服装を変える

参照画像機能を活用することで、人物の服装を指定のものに変えたりすることも可能です。

また、服装だけではなく、人物の髪型も変更する事が出来ます。

描画拡張

 カンバスサイズを広げ、実行すると見切れている部分が自動的に補完され、描画されます。
 これにより、撮影時にフレームアウトしてしまった被写体の周囲を自然に拡張したり、デザイン用途に合わせて縦横比を変更することが可能になります。
 従来の「トリミングで収める」発想から一歩進み、足りない部分を生成して新しい構図を作れる点が、制作の自由度を大きく広げています。

二つの画像を結合する

生成塗りつぶし機能を活用して、二つの画像を違和感なく結合します。

まず、二つの画像を隣合わせるようにドキュメントへ配置します。
繋ぎ目を選択し、プロンプトは空白で実行します。

二つの画像を違和感なく結合することが出来ました。

 さらに、この機能を応用すれば、風景写真をパノラマのようにつなげたり、異なる素材を一枚のビジュアルにまとめたりすることができます。フォトモンタージュや広告ビジュアル制作においては、手作業で境界をぼかす工程が不要になり、短時間で自然な合成が可能になります。

ニューラルフィルター

 AI技術を利用した強力な人物・風景加工フィルターです。
 人物写真の表情を変更したり、モノクロの風景を自動的に着色する等が可能です。

自動着色

 モノクロ写真や白黒イラストに対して、自動的に自然な色を付与する機能です。被写体の種類や背景をAIが解析し、肌や空、植物などに適切な色が適用されるため、手作業では膨大な時間がかかるカラー化作業を短時間で実現できます。

風景ミキサー

 別の画像と組み合わせたり、時刻や季節を変更することが可能です。例えば昼の写真を夕景に変えたり、夏の風景を雪景色に変換したりと、実際には撮影が難しいシーンも簡単に再現できます。これにより、企画やデザインに合わせたバリエーションを効率的に作成できるようになります。

スマートポートレート

 表情や年齢、目の向きなどを調整することが可能です。
 笑顔を強調したり、人物を若々しく見せたり、視線をカメラの方向へ自然に修正するなど、モデル撮影後の細かなリタッチを簡易に実現できます。ポートレート写真の印象を自在に変えられるため、広告やプロフィール用の写真制作にも有効です。

AI処理の精度を検証

 AIによる各種加工処理が実際にどの程度の精度を持ち、印刷物として利用できる品質に達しているかを検証しました。具体的には、加工部分を拡大して細部を確認するとともに、実際に印刷を行い、実際の紙面上で仕上がりを比較・確認しました。

全体的な傾向

 全体を通じて、解像度に関してはオリジナル画像と大きな差は見られず、加工部分だけが浮き出るような不自然さは確認されませんでした。印刷した際にも、一般的な観察では違和感を覚える箇所はほとんどなく、実務上十分に活用できる品質であるといえます。ただし、使用するツールによって仕上がりの特徴に差があり、それぞれに留意すべきポイントがあることも確認できました。

削除ツール

 シンプルな背景を持つ素材においては非常に高精度であり、拡大しても加工跡を見抜くことは困難でした。特に、今回検証したビーチの写真においては、AI補完部分が背景と自然に溶け込み、加工されているのか判別できないほど自然な仕上がりでした。

 一方で、複雑な構造を持つ画像では、削除対象の背後に補完された部分にわずかな構造的な変化が生じることがありました。例えばテントの支柱部分が、一般的なものとはやや異なる形状として再構成されるケースが見られました。しかしながら、これも拡大して注視しなければ気づかないレベルであり、印刷して確認した場合には違和感はほとんど感じられませんでした。

生成塗りつぶし

 生成塗りつぶし機能では、「空間に新たな要素を追加する場合」と「既存の要素を置き換える場合」で仕上がりに差が見られました。
 まず、空間に物体や生物を新たに生成する場面(例:海の中に亀を生成)は非常に自然であり、陰影や質感も周囲と整合しており、拡大しても不自然さはほとんど感じられませんでした。

 一方で、既存の要素を別のものに置き換える場合(例:茶色の犬を白い犬に変更)では、解像度や陰影に関しては十分自然であるものの、写真全体の構図として直感的に「綺麗すぎる」印象を与える場合がありました。このような場合、一部ではやや演出感が強く感じられることもあります。

 また、描画拡張機能により上半身の写真を全身に拡張した事例では、オリジナル部分と拡張部分の間で解像度に明確な差が生じており、拡大するとその違いが顕著に確認できました。

ニューラルフィルター

 ニューラルフィルターに関しては、使用する機能ごとに精度に特徴がありました。

 スマートポートレートでは、解像度に関してはオリジナルと大きな差はなく、加工によって表情が変更されていても、元の写真と比較しなければ加工の有無を見抜くことは難しいレベルでした。広告やプロフィール写真においても十分に使用できる品質といえます。

 一方で、風景ミキサーを利用して季節や時間帯を変更した画像(例:夏の風景を冬景色に変換)は、印象としては、非常に強力な効果を発揮する一方で、処理後の画像において解像度の低下や不自然な造形が見受けられました。
 加工処理の痕跡が明確に残り、一目で加工された画像と判断できるような結果となるケースもあり、使用目的によっては十分な注意が必要です。

まとめ

 今回の検証から、生成AIを活用した画像加工機能は全体的に高い精度を有しており、印刷確認の段階でも大きな問題は確認されませんでした。
 特に「削除ツール」や「生成塗りつぶし」機能は、実務レベルでも十分に活用できる品質を備えており、効率的な画像処理に寄与することが確認できました。
 一方で、要素の置換や描画の拡張、「風景ミキサー」などの高度な加工機能については、解像度の不整合や構造的な違和感が残るケースも一部見受けられました。そのため、実際の制作現場では用途や目的に応じた慎重な使い分けが必要となります。
 とは言え、これまで多くの工数がかかっていた画像加工が短時間で実現可能となったことは大きな進歩であり、クリエイティブ制作に大きな変革をもたらしています。

 明昌堂では、こうした最新技術の研究・検証を通じて、お客様のデザインやブランディングをより効果的に支援できる体制を整えております。当社ホームページもご覧いただき、お気軽にお問い合わせください。

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