動画制作に欠かせないナレーションも、今やAI音声で手軽に作成可能。
数多く登場するTTS(音声合成)ソフトの中から注目の5製品を厳選。
音質・操作性・商用対応など、実用面から徹底比較しました。
映像制作において、ナレーション音声は作品全体の印象を大きく左右する重要な要素です。近年では、プロのナレーターに依頼せずとも、自然な音声を自動生成できる「TTS(Text-to-Speech)」技術の進化により、音声制作の選択肢が大きく広がっています。
現在、多くのTTSソフトが市場に登場しており、それぞれに特徴や強みがあります。そこで本レポートでは、代表的なTTSソフトをいくつか取り上げ、ナレーション用途における機能や使い勝手を、ユーザー目線で比較・検討していきます。
今回は検証したサービスは下記の5つになります。
・VOICEPEAK
・OTOクリエイタ
・RecCloud
・Gemini 2.5 Pro Preview TTS(音声AI)
・Aivis Speech
掲載情報は2025年7月16日時点のものです。

VOICEPEAK
価格形態:買い切り制の永続ライセンスであり、1回の購入で継続利用が可能です。
商用利用の可否:法人ライセンス・商用ライセンスのみ商用利用可(使用期間の制限なし・クレジット表記の必要なし)。
想定される活用ジャンル:教材動画・映像ナレーション
VOICEPEAKは、Dreamtronicsと株式会社AHSが共同開発している日本語音声合成ソフトウェアで、高い音声品質と操作性の両立に定評があります。
感情表現に対応した複数のナレーター音声を搭載しており、ユーザーは話速・抑揚・音高・感情スタイルなどをGUI上で直感的に調整することができます。
VOICEPEAKならではの機能・特長
VOICEPEAKは、TTSソフトとして高い品質と実用性を両立しており、特にナレーション制作に特化した直感的な操作性と感情表現の豊かさが特徴です。
GUI上では、音声スタイルや感情(喜び・怒り・悲しみなど)を簡単に切り替えられるほか、話速・抑揚・音高の個別調整にも対応しており、ユーザーの意図に合わせた細かなニュアンス表現が可能です。また、変換精度も高く、読み間違いが少ない点や、固有名詞の辞書登録機能なども備えており、実務用途でも安定して使用できます。

音声モデルの豊富さ
VOICEPEAKの大きな特長のひとつに、音声モデル(話者)のバリエーションが豊富であることが挙げられます。

標準で提供されるパッケージには、男女合わせて7名のナレーター音声が含まれており、それぞれに個性や声質の違いがあります。
これらの話者は感情スタイルの切り替え(喜び・怒り・悲しみなど)にも対応しており、同じテキストでも表現の幅を広げることができます。
さらに、追加の話者を個別に購入して使用することも可能で、用途に応じてカスタマイズがしやすい点も魅力です。
複数話者を使い分けることで、コンテンツに抑揚や場面転換を加える構成が容易になり、より豊かなナレーション制作が実現できます。
VOICEPEAKのライセンス種別について
VOICEPEAKには、利用者の属性や利用目的に応じた3つのライセンス形態が存在します。
特に「商用ライセンスまたは法人ライセンスを取得している場合のみ」商用利用が許可されている点には注意が必要です。
用途に応じ、適切なライセンスを取得する必要があります。詳細は公式サイトをご確認ください。
VOICEPEAKライセンス種別一覧

※上記内容は公式ページの記載をもとに引用しています。詳細・最新情報は公式ページをご確認ください。
出典:https://www.ah-soft.com/commercial/voicepeak/
VOICEPEAKの特色まとめ
VOICEPEAKは、ナレーション制作に特化した国産の音声合成ソフトとして、高い音声品質・優れた操作性・実務に対応したライセンス体系を備えています。
GUIベースで直感的に音声を編集できるため、専門知識がなくても感情表現・話速・抑揚・音高などの細かな調整が行え、映像・教育・業務コンテンツなど、幅広いジャンルに対応可能です。
また、商用利用に対応したパッケージでは、クレジット表記不要・使用制限なしで商用コンテンツへの組み込みが可能であり、安心して業務に活用できる構成となっています。
OTOクリエイタ
価格形態:お試しプラン(無償)あり。他、標準プランのスタンダードと上位プランのエクストラ(1か月・1年)から選択可能。
商用利用の可否:商用利用可(使用期間の制限なし・クレジット表記の必要なし)。
想定される活用ジャンル:動画コンテンツやeラーニング教材への音声・コールセンターなどの自動音声
Webブラウザ上で完結するクラウド型の多言語AI音声合成サービスな為、インストールが不要です。

プラン詳細

(公式サイトから引用)
※スタンダード/エクストラの違いについては、主に下記の通りです。
・エクストラコース限定の話者が使用可能
・音質、音量、話速、抑揚、高さ、休止の調整が可能
・ユーザー辞書登録が可能(地名や人名等)
ヨミガナ機能(スタンダード/エクストラ)
同じ漢字でも複数の読み方を持つ語句が多く、文脈だけでは正しい読みを判断できない場合があります。「ヨミガナ機能」は、漢字の読みを詳細に指定出来る機能です。
たとえば「大事」という言葉は、
・「これはだいじだ」(=重要である)
・「これはおおごとだ」(=大事件・深刻な事態)
のように、読み方によって意味がまったく異なります。
そういった場合には、下記の手順で漢字の読み方を指定可能です


「やさしい日本語」翻訳機能
子どもや外国の方など、日本語にあまり慣れていない方向けに、専門用語や漢字を分かり易い表現に翻訳する機能です。

音声チューニング(エクストラ限定)
声質・抑揚や話すスピードGUIなどをコントロール可能です。
また、グラフのようなGUIを使用して音程などを細かく調整することもできます。


OTOクリエイタの特色まとめ
やさしい日本語変換、AI翻訳機能など、情報伝達の「正確さ」や「わかりやすさ」に重点を置いた設計がなされていると感じました。
実際に複数の音声で試聴を行ったところ、全体的に声のトーンや発話スピードが落ち着いており、聞き手に対して距離を保ちながら伝えるような“アナウンス的なニュアンス”が感じられました。
公共施設での自動音声案内や、交通・防災情報の読み上げといった、「信頼感・中立性」が求められる場面に適している印象です。
RecCloud
価格形態:サブスクライブ方式。ベーシック・プロ・ビジネスの三つから選択可能
商用利用の可否:ビジネス(最上位プラン)のみ可能
想定される活用ジャンル:動画コンテンツ、教材など
Webブラウザ上で動作するクラウド型TTSサービスで、テキスト入力のみで簡単に音声が生成できます。

また、RecCloudのTTSはAI(音声合成技術)をベースにした音声生成サービスです。TTS以外にも様々なツールがあります。

プラン詳細(公式サイトから引用)

*およそ200文字の処理で1クレジットを消費します。
細部の調整について
音量や話すスピードは変えることが可能ですが、声質や抑揚など、細かい部分は変えることが出来ません。

RecCloudの特色まとめ
RecCloudの音声には、人間特有の間の取り方や話し方に近いニュアンスが一部感じられ、感情の要素がうっすらと含まれているように聞こえる場面もあります。
ただし、再生中に一部で不自然なイントネーション(アクセントや語尾の抑揚など)が発生することがあり、現時点ではそれをユーザー側で調整・修正する手段が提供されていません。
そのため、自然な読み上げが重視されるシーンでは、使用する原稿を工夫するか、他のTTSとの併用を検討する必要があるかもしれません。
Gemini 2.5 Pro preview TTS(Google AI Studioで試用)
価格形態: 有料API(従量課金制)、ただしGoogle AI Studioでテスト使用が可能
商用利用の可否:有料APIを使用したクラウドサービスなどから生成したものは商用可能。
ただし、Google AI Studioから生成した音声に関しては明示なし(許可も禁止もされていない)
想定される活用ジャンル:対話形式スタイルの動画など
Gemini 2.5 Pro Preview TTS は、Googleが提供する大規模言語モデル「Gemini」シリーズに基づいた最新の音声合成モデルであり、自然なイントネーションや間の取り方を特徴とするTTS(Text-to-Speech)システムです。
このモデルは、API を取得して利用する方法に加えて、Google が公開している 「Google AI Studio」 という Webベースのテスト環境を通じて、無料で試用することが可能です。

複数話者(マルチスピーカー)音声生成と対話形式への対応
Google AI Studio の音声生成機能では、1つのテキストプロンプト内で複数の話者を切り替えて音声を生成することが可能です。
これにより、会話やナレーションの中で異なるキャラクターや役割を再現することができ、自然な対話形式の音声を生成する用途にも対応しています。
たとえば、以下のように話者を明示したテキストを入力することで、それぞれのパートに応じた声が割り当てられます:
Person A:こんにちは。今日はどんなご用件でしょうか?
Person B:はい、予約を変更したいのですが。
このように、話者名を冒頭に記述するだけでAIが自動的に対話構造を認識し、異なる音声スタイルで読み分けてくれる点は、他のTTSサービスと比較しても非常に優れた特徴のひとつです。

スタイル指示(プロンプトベースの柔軟な音声制御)
Google AI Studio では、音声のスタイル(話し方・トーン)や間の取り方、強調の程度などを自然言語のプロンプトによって柔軟に指示することができます。

たとえば、以下のような文をスタイル指定として付け加えることで、TTSの読み上げスタイルが変化します:
・“Speak like a news anchor.”(ニュースキャスターのように話してください)
・“Read it slowly and clearly.”(ゆっくり、はっきり読んでください)
また、文中にカンマや改行を挿入することで、音声の「間(ポーズ)」の長さやテンポにも影響を与えることができます。
他のTTSサービスのよう文字単位での詳細な調整は出来ませんが、生成時点でのクオリティは比較的高いように感じました。
プライバシーとデータ利用に関する注意点
Gemini 2.5 Pro Preview TTS の利用には、主に以下の2つの方法があります。
① Google Cloud の有償APIとして利用する方法(正式な Gemini API 経由)
② Google AI Studio(開発者向けのテスト環境)を通じて利用する方法
この2つの方法では、データの取り扱いや商用利用の可否に関して異なる点が存在します。
① 有償API(Google Cloud 経由)で利用する場合
Google Cloud Platform の利用規約とGemini API 追加利用規約に基づき、以下のように定められています:
・生成された音声はユーザーのアプリケーションに組み込み可能である(商用利用が原則として許可されている)。
出典:Google Cloud platform利用規約/第1条 1.1 Services Use
・生成物に関する知的財産権はユーザー側に帰属すること。
出典:Google Cloud platform利用規約/第5条 5.1 Intellectual Property Rights
・Gemini API の有料枠などを含む有料サービスを使用する場合、 Google は、使用者のプロンプトまたは 回答をプロダクトの改善に使用することはないこと。
出典:Gemini API 追加利用規約
これらにより、Google Cloudの正式なAPIを経由したTTS生成は、商用利用が可能であり、送信データや生成結果がAIモデルの学習に使用されることもありません。
② Google AI Studio(無料のテスト環境)で利用する場合
一方、Google AI Studio は開発者向けの無償テスト環境であり、Gemini 2.5 Pro Preview TTS の無料試用が可能です。ただし、以下のような注意点があります。
・商用利用について 明確な許諾・禁止の記述は存在しません(≒不明確)。
・生成物のライセンス条件は個別に明記されていません。
また、学習データの取扱いについても、Gemini API 追加利用規約の中で、以下のように明記されています。
「本無料サービス(Google AI Studio や Gemini API の無料枠など)を使用する場合、Google は使用者が本サービスに送信したコンテンツと生成された回答を使用し、Google のプライバシー ポリシーに従って、Google のプロダクト、サービス、機械学習技術の提供、改良、開発を行います。(略)
本無料サービスには、プライベート情報、機密情報、または個人情報を送信しないでください。」
(出典:Gemini API 利用規約)
この記述からも分かる通り、商用目的や機密情報の取扱いを想定する場合には、運用形態を慎重に検討した方が良いと思われます。
Gemini 2.5 Pro Preview TTSの特色まとめ
Google AI Studioのテスト環境では、全体的に非常にスムーズかつ応答が速く、操作もシンプルで直感的でした。複数話者の対話形式を処理できる点や、自然言語ベースでスタイルを柔軟に指示できる点は、既存のTTSサービスと比較しても大きな特長だと思います。
ただ、一部でイントネーションやアクセントに違和感を覚える場面があり、それに対してユーザー側で細かく調整できない点は工夫が必要に感じました。
また、無料で利用できる点は魅力ですが、生成された内容がGoogleのモデル改善に使用される可能性があることには注意が必要です。
利用する情報の性質によっては、必要に応じて有料APIを活用する選択肢も検討すると安心かもしれません。
今後、音質の向上や日本語話者の最適化、商用ライセンスの整備が進めば、十分に実運用にも耐えうるTTSプラットフォームとして期待できるポテンシャルを感じました。
Aivis Speech
価格形態:無料
商用利用の可否:可能
想定される活用ジャンル:動画ナレーション(YouTube、SNSなど)、オーディオブック(複数話者の切替も容易)など
AivisSpeech は、日本語に特化した感情豊かな音声合成(TTS)ソフトウェアです。
無料でダウンロード・使用が可能で、Windows および macOS(Apple Silicon 推奨)に対応しています。
LGPL‑3.0ライセンス(商用利用可)のもと、オープンソースソフトウェアとして公開されており、個人・商用問わず自由に利用できます。
直感的UIと少ない調整で高品質
AivisSpeechは、「入力 → 音声モデル選択 → 再生」というシンプルな操作フローで音声合成が行える、非常に直感的なユーザーインターフェースを備えています。
・特別な設定やパラメータ調整を行わなくても、初期状態で十分に自然な音声出力が得られるた
め、TTSツールに慣れていないユーザーにも扱いやすい設計です。
・音声モデルや感情プリセットの切り替えもワンクリックで行えるため、試聴と比較がしやすく、作業効率が高いのも特長です。
特に、「とりあえずしゃべらせたい」「調整よりスピードを重視したい」といった用途において、ストレスなく高品質な結果が得られるのは大きな魅力といえます。

感情プリセットで「声のニュアンス」を自在に演出
AivisSpeech は、文章の文脈に応じて自然な抑揚を自動生成できるだけでなく、感情プリセットを選ぶことで、より印象的な音声演出が可能です。

これらはクリック1つで切り替えることができ、さまざまな感情のバリエーションを直感的に再現できます。
追加音声モデルもダウンロード可能
AivisSpeech では、初期インストールに含まれる音声モデルのほかに、追加の音声モデル(話者)を後からダウンロードして利用することができます。

・話者ごとに異なる音質・発声スタイルを持ち、用途に応じて選択肢を広げられます。
・追加話者は公式サイトなどを通じて取得でき、商用利用もOK。
・ダウンロード後は、既存話者と同様にプリセットの切り替えや感情演出も可能です。
また、他のTTSツールと比較して、ややポップで明るめな音声傾向があるのも特徴です。
キャラクター性のあるナレーションや親しみやすいコンテンツに適しており、エンタメや教育系ジャンルに特にフィットします。
AivisSpeechの特色まとめ
AivisSpeechは、TTS初心者でも扱いやすいシンプルかつ直感的な操作性に加え、感情表現や話者の選択肢が豊富で、実用性の高いツールだと感じました。
すでにVOICEPEAKなどの有償TTSソフトを所有している方であれば、そちらで十分かもしれませんが、無償でここまでの品質が得られるのは魅力的です。
特に、ナレーションやキャラクターボイスの制作をこれから始めたい方にとっては、コストをかけずに高品質な音声合成を手軽に体験できる貴重な選択肢と言えるでしょう。
まとめ
今回の比較を通じて、各TTSソフトにはそれぞれ異なる強みと個性があることが分かりました。
VOICEPEAKは、操作性・動作安定性・音声品質のバランスが優れており、ナレーション制作における主力として安定している印象を改めて受けました。
また、Gemini 2.5 Pro Preview TTSは、自然言語によるスタイル指定や対話形式への対応が想像以上に柔軟で、将来的な活用の幅広さを感じさせる点が興味深く思えました。
OTOクリエイタについては、商用利用に関するライセンス体系が明快で、導入しやすい点も特長のひとつです。さらに、日本語に特化した機能も充実しており、実務での活用に適した高品質なサービスでした。
一方、RecCloudやAivisSpeechは、設定が非常にシンプルで、初心者でも迷わず使い始められる点が魅力です。特にAivisSpeechは、無償ながらも感情プリセットや音声モデルの切り替えなど、ナレーションに必要な機能がしっかり備わっており、初めてTTSを使うユーザーにとって大きな入り口となるツールだと感じました。
総じて、どのツールも一長一短があり、利用目的(例:ナレーション品質を重視するか、対話形式を再現したいか、費用を抑えたいか)によって適した選択が異なるということが確認できました。
今後は、それぞれのツールの進化に注目しつつ、目的や制作環境に応じて柔軟に組み合わせていく活用方法も視野に入れると良いでしょう。
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