デザインポートフォリオvol5
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 しんと静まりながら、子どもたちが真剣に「お仕事」に取り組む緊張感、その特別な空気感――。モンテッソーリ教育を実践する幼稚園で見た子どもたちの姿に衝撃を受けたことが、モンテッソーリケアという新しい介護の出発点です。 モンテッソーリ教育の考案者は、20世紀初頭のイタリアに生きた医学博士、マリア・モンテッソーリ。彼女は医師として、知的障害や学習障害を持つ子どもたちと関わるうちに、適切な支援さえあれば彼らも大きく成長できることを発見しました。その後、精神医学や教育学を研究したマリアは、ローマの貧しい地域に「子どもの家」を設立し、そこで独自の教育法を実践し始めました。子どもたちのために作った特別な教材を用意し、誰もが自由に使えるようにしたのです。すると、子どもたちは次第に落ち着き、自ら学び始めました。 こうして確立されたのが、モンテッソーリ教育の基礎です。それまでの教育法との決定的な違いは、子どもの発達段階と自主性を重視した点にあります。当時、子どもは教えを受ける受動的な存在とされていましたが、マリアは自ら学ぶ力を引き出す教育を通して、世界に新たな風を吹き込んだのです。モンテッソーリ教育との出会いが、そのまま介護へとストレートに結びついたわけではありません。子どもは日々成長していく存在です。一方で、高齢になれば、少しずつ心身の機能は衰えます。さらに認知症を発症すれば、以前は簡単にできたことまで忘れてできなくなってしまうことも……。日々、できることが増えていく子どもと、能力を失っていくように見える高齢者では、印象が大きく異なるのも無理はありません。とはいえ、認知症になったからといって、何もかもができなくなるわけではないのです。モンテッソーリ教育のように、興味を持ったことに自由に取り組めるような環境を整えられたなら、介護にもいい効果があらわれるのではないか? そんな仮説から、私たちは介護の常識に挑戦することになりました。「ひらめき」から始まったモンテッソーリケア。好循環の始まりは、同じ時間の流れを共にすることー039038モンテッソーリ教育を介護へ1章モンテッソーリ教育を介護へよりよい介護を模索するなかで出会った、「モンテッソーリ教育」。子どもの教育と高齢者の介護の架け橋になる大切な理念とは?1章読み物[デザイナー]西巻直美マンガでわかるモンテッソーリケア版形:A5 [装丁]Font:A-OTF UD新丸ゴ Pr6 H [誌面本文]Font:じゅん ProN 501 など[カバー]漫画の色入れから作業させていただきました。本文は漫画ページの補足的な内容なので、紙面デザインはとにかくシンプルにしました。色入れのディレクション作業も当社で行いましたが上手くできました。07No.

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